感情のSOS, ダンサーが怪我をする瞬間を事前に察した話

Rosensteinpark Stuttgart Germany

 

先日愛さんのブログ

https://t.co/s2XJL1NiYB?amp=1

を拝見してダンサーさん達が

怪我をする瞬間を察した事を思い出しました。

今までに2度ある経験です。

感情のSOS

見逃してはいけないですね…

少し長めの文章です、悪しからず。

目次

P君

1度目はかなり前。

はっきりは思い出せませんが、8年くらい前。

あるドイツのバレエ団で

かなり高い身体能力が要求される作品の

再演の準備をしていました。

ハイスピード

ハイテクニカル

若く技術力の高いダンサーさん達も

多かれ少なかれ

苦労なされる作品です

初演の2日前。

P君は当時バレエ団に入団して2年目だったかなと思います。

アカデミーを卒業してから

他のバレエ団でも踊っていたようなので

おそらく20代半ば。

とても良い動きをするダンサーでしたので

ちょっと目立つソロを2つ踊っていました。

出来は素晴らしく

彼が本番でカッコいい所を

披露してくれるのを楽しみにしていましたが、

どうも一ヶ所…いまいち決まらない所があり…

最後のダメ出しをしていたのです。

彼もおそらく完璧を目指して

振付家からも

アシスタントの私からも

GOサインをもらう事を目指して…

リハーサル室の端で自分で練習をしているなぁ~

と横目で見ていたら

数秒後には床にうずくまっていました。

 

M君

M君の事故は最近。

彼も20代半ば~後半かな?

遠い国からドイツへ来て

カンパニーに入団して程なく怪我

リハビリをして復帰したら

コロナで踊れず…

「やっとまた舞台を楽しめるよ!」と話していたのは

朝のバレエのクラスの前。

事故の数時間前でした。

 

M君は独特な雰囲気の持ち主で

素敵なソロを踊っており

作品の中でも重要な役割を果たし

舞台上でのパフォーマンスを

本人も、私達も心から楽しみにしていたのです。

初演の1週間前くらいのリハーサル中。

やはり振付家からダメ出しがあり、

その後に一緒に踊る仲間達と

スタジオの端で合わせていた際の怪我

気づいたら床にうずくまっていました。

 

いつもと違う?

どちらのケースでも私が感じていたのは

彼らの行動

態度が

いつもと違ったこと

ちょっと焦っている?

行き詰っている?

良い表現ではありませんが

少々取り憑かれているような…

 

後から本人達から聞いた事ですが

私が彼から感じた

「いつもと違う」

行動や態度の原因は

 

P君

1:入団してから自分の良さを出せる作品が

まだ与えられておらず、これがチャンス!と

かなり気張っていた。

2:我がボスのカィエターノの作品を

すでに長年も踊りたいと思っていた。

だから彼の作品を踊れるという機会に

ベストを尽くしたかった

わかりますよね…

 

M君はどうもその日は気が重かったと。

朝から調子が悪かった。

でも本番前の大事なリハーサル期間

自分にプレッシャーをかけたのでしょう…。

バレエのクラスで

エクセサイズを覚えないタイプではないのに

その日は全く覚えておらず

クラスの最中に振付けの気になる箇所を

さらっていたりしている。

 

そんな彼を見ながら

今日は集中力ないなぁ…と思いつつ

あまりシリアスに考えるのも良くないかな…と

とりあえずスルー。

 

数十分後、リハーサル開始前に

まだ誰もいないスタジオで

1人で黙々と…

その時の彼の表情が

やはり気になりました。

軽い調子で肩を叩き、

「そんなに取り憑いたように練習しなくても!」

と言うと彼も笑いながら

「知ってるでしょ~、僕はクレイジーだからね~」

その後のリハーサルでも

今までに一度もぶつかったり

しなかった箇所で

仲間と衝突している…

やっぱり変だわ、と思った瞬間

後方で小さな叫び声…

皆が彼を囲っていました。

 

怪我の瞬間に駆け抜ける思考

私は致命的な怪我を負ったタイプではないのですが

15年の長いプロダンサー人生でしたので

それなりに数回…

怪我をした瞬間に

ものすごいスピードで駆け抜ける思考

怪我?した?

ヒドい?軽い?

動ける?立てる?無理?

続けられる?

本番出られる?????

多分10秒もかからない間に

これらの全てが駆け巡る

そして重症だとわかった瞬間

踊れないとわかった瞬間のショック

その瞬間のP君とM君の表情が

忘れられません。

 

そしてその後に病院か帰宅後に

巡る思考の嵐、No.2

どのくらい動けないんだろう?

どのくらい回復にかかるんだろう?

いつから踊れるんだろう?

最悪の場合には

また踊れる?

もう やめましょう…

 

後悔と希望

本番前

心も身体も疲れている事が多いです。

そんな時には思考も判断も冷静さを失い

突然不安になったり

心が揺さぶられて、ざわざわしたらり

いつもと違う行動に出たりすること

あると思います。

 

彼らの事故と怪我を思い返し、

今の私にできるのは異変を気付きつつ

なんの役にも立てなかった後悔と

また起こり得る怪我を予防するために…

そんなサインを

多くの方々に

気づいてもらうこと。

 

本番間近に少々緊張しているのは

大丈夫かなと思いますが

もし周りの同僚や

生徒さん達で

平常心を失っているように見える人がいたら

疲れているはずなのに無意味な(に見える)

練習を繰り返しているなと思ったら

何か安心させる言葉をかけてみてください。

休むように促してみてください。

人それぞれ、タイプが違うので

どのような声をかけるのが一番良いのかわかりませんが、

 

「良く出来てるから心配ないよ~

本番にベストを尽くせるように少し休めば?」

 

「同じ動き続けてると、偏った箇所の筋肉が疲労してしまうから

コンディション整えるエクセサイズをして体調整えた方が良いよ」

 

「楽屋で少しヘアとメイク治してから再開すれば?」

 

時間があるなら

「少し外に新鮮な空気吸いに行こうよ」

または

「水分補給足りてる~?」って

逆に邪魔してみるとか!

 

あまり上手い例じゃないですね…

すみません。

もし何かいい手段があったら

是非教えてください!

 

そして一番大切なのは

 

そんな自分に気づく事。

「ダメだと思った」ら

立ち止まって

ちょっと冷静になって…

 

落ち着いてどうするのが良いのか

考えるように。

突っ走って

「頑張る」

のが全てではありません。

 

ダンスだけでなく

どんな状況においても大事だと思います。

 

写真:ローゼンハイム公園、シュツットガルト ドイツ

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