ダンスサイエンスの視点から「完璧主義」と「クリエイティビティ」

Montjuïc Barcelona

 

タイトルは変えましたが

内容は育ちが見えるタブーな傾向No.2。

先日の育ちが見えるタブーな傾向とBeautiful mistake の続きです。

 

もう少し「サイエンス」の視点から書いてみます。

「間違えてはいけない」

「間違えたくない」

は完璧主義の兆候の一つだと思います。

 

今日はダンスサイエンス界では

権威のお一人だと思われる

Sanna M. Nordin-Bates さんの文献を引用させていただきます。

 

Sanna M. Nordin-Bates (2019): Striving for Perfection or for Creativity, Journal of Dance Education, DOI: 10.1080/15290824.2018.1546050

 

彼女は完璧主義のテーマの論文も

そうでないテーマの論文も

多く発表なされていて

山のようにある中から

今回は一つ。

 

去る10月に彼女が講義をしてくださったのですが、

簡潔明解。

弓矢が真っ直ぐに的を得る感じ。

明るい雰囲気の素敵な女性でした!

 

完璧主義と聞くと

どのようなイメージを持たれますか?

ネガティブなイメージではありませんか?

 

私はそうでした。

でも場合によってはポジティブに考えられるのです。

彼女の授業を受けていた

私たち生徒にとってはこれがある意味一番驚きでした。

 

ダンスサイエンス視点の完璧主義

さて本題。

ダンスサイエンスのみでなく

スポーツサイエンスでも同じようですが

完璧主義を2つに分けてお話されています。

 

日本語ではなんて言うのだろう?と調べてみましたが

見つかりませんでしたので

(ご存知の方、是非教えて下さい!)

自分なりに説明してみます。

 

Perfectionistic Strivings (PS) パーフェクショニスティク ストライビンングス

完璧に向かって努力をする

Perfoectionistic Concern (PC) パーフェクショニスティク コンサーン

完璧でないことを心配する

 

これらを掘り下げて行き

PS と PC の完璧の度合いなどを考慮。

考え方の柔軟性や頑固さの度合いなどを加え

さらに4タイプに分けていく。

専門になるとおそらく

もっと複雑になるのでしょうね…

 

PSさん

完璧を目指して努力をするタイプ。

目指している完璧の度合いなどで

ポジティブに考えられるか

そうでないかが分かれますが、

「よ〜し、やるぞ〜!」と

ある意味ゴールに向かって前進できるので

度が過ぎなければポジティブに考えられます。

 

PCさん

こちらが前回のお話の4番さん。

完璧でないのではないかと

心配で仕方がないので

…残念ながらポジティブには

考えられないタイプです。

 

完璧主義とクリエイティビティ

は?

って言われそうですが、関係するんです。

…とSannaさんがおっしゃっています!

 

It was found that flexible perfectionistic strivings (PS) were seen to support creativity, whereas rigid PS and perfectionistic concerns(PC) were seen as inhibiting.(Nordin-Bates,p.1)

柔軟性のあるPSはクリエイティビティ(創造性)を促進し、頑固なPSとPCはそれを抑制する。

下手な和訳で恐縮ですが…つまり…

 

適度に完璧を目指して頑張れるPSタイプは

創造性をうまく伸ばすことができる。

 

過度に完璧を目指す

いわゆる絵に描いたような完璧主義で

100%をゴールにしてしまう頑固なPSタイプや

完璧でない事を心配してしまうPCタイプは

創造性を生かすことができない。

 

PC are likely to limit creativity because of the inherent associated anxiety surrounding personal adequacy(“Am I good enough?”), mistakes (“What if I make amistake?”), and social approval (“What will they think of me?”). (Nordin-Bates, p.10)

PCは ”私の能力は適切、十分に足りてる?” ”間違えたらどうしよう?”  ”周りは私をどう思っているんだろう?” が心配でクリエイティビティ(創造性)を抑制す傾向がある。

 

クリエイティビティがなぜ大事?

難しい文章がくる前に

さっと私のつたない言葉でまとめますと…

 

創造は人間が幸せに生きていく上で大切なんです。

自分が自分であるという独創性や

それが認められるとこが

成長していく

生きていく上で不可欠な要素です。

 

ダンスではまた創造性が

リハーサルやクラスにおいて

つまり学んだり

練習をしている時の経過、

また最終的な結果としても

重要視されていて

「教えることができる」と考えられています。

つまり生まれ持った才能ではないのです。

 

Creativity is also related to well-being, and is sometimes described as a form of optimal human functioning (Simonton 2000). Whether to promote success or well-being, therefore, it would appear that creativity is becoming ever more important. .(Nordin-Bates,p.1)

創造性は幸福感とも関係があり、人間が最適に機能するための形態と表現されることもある(Simonton 2000)。成功のためであれ、幸福のためであれ、創造性の重要性はますます高まっている。

Although differences exist in how creativity is defined or conceptualized, the most established definition is that it comprises originality and usefulness (Runco and Jaeger 2012).In dance, creativity is further conceptualized as both a process and an outcome, and also as a skill that can be taught (Press and Warburton 2007). (Nordin-Bates,p.1)

創造性の定義や概念には違いがあるが、最も確立された定義は、独創性と有用性からなることである(Runco and Jaeger 2012)ダンスでは、創造性はさらに、プロセスと結果の両方として考えられ、また、教えることができるスキルとしても知られている(Press and Warburton 2007)。

 

さらに…


creative work was seen as capable of reducing PC.
(Nordin-Bates,p.6)

創造性は完璧でないという心配を和らげることができる。

 

クリエイティビティに関しては

また改めて…

深い、テーマですから。

完璧主義のバックグラウンド

完璧主義を引き起こす事柄の例として

こんな事が書かれていました。

what might be antecedents of perfectionism (extremely high demands, criticism, comparisons of dancers, set views on right and wrong, teachers or choreographers who are neverpleased).(Nordin-Bates,p.4)

1: 難しすぎる要求、

2: 批判、

3: ダンサー同志の比較、

4: 正しいか正しくないかについての凝り固まった見解

5: 決して満足しない教師や振付師

 

前回の話題の4番さん↑いましたね。

周りのダンサーを見て自分と同じかどうか確認し続ける人

「間違えてはいけない」

「間違えたくない」

という傾向のある人です。

 

そしてあなたがもし教える立場の方でしたら

1、2、5が気をつけたい所です…

 

完璧主義を生み出す原因

原因はおそらく個々で違いますから

絶対的でないと思いますが

こちらに例として

perfectionism appears to be nurtured when success without effort is valued, and leaders are per ceived to be pressurizing and highly critical (e.g., Mallinson and Hill 2011). (Nordin-Bates,p.2)

完璧主義は努力をせずに得られた成功が評価されたらり、指導者が圧力を与えたり、非常に批判的である場合に発生する。

 

これは指導者のみならず

ご両親も同じですね。

ちなみに完璧主義は遺伝のような要素もあるようですが

環境にかなり左右される。

つまり「育ち」が大きく影響するそうです。

 

そして自己決定論が登場。

Ryan, R. M., & Deci, E. L. (2000). Self-Determination Theory

こちらは近いうちにまたゆっく考えたいテーマですが

人間が幸せに生きていく

そして学習過程のモーティベーションを論じたもの。

 

教育を勉強された方は必ず読まれていると思いますが

生活する上で欠かせない

 

人間の心理的欲求の基本 

(Basic Psychlogical Needs)

 

Autonomy (自主性)

Competnce (有能感)

Relatedness (関連性)

 

なんだか固い言葉で…????でしょうか?

 

今回は完璧主義がメインのお話ですので

詳しい説明は割愛しまして…改めて。

 

なぜこの話が出たのかというと…

バレエの環境下ではPCが多くみられる。

 

上記の3つの欲求が満たされてない場合や

指導者が過度の完璧主義(PC)だと

生徒も同じような完璧主義になりがちだと。

そしてそれはバレエに多く見られる。

自主性を促進することが

バレエには最重要である…

 

Perfectionism appeared to be nurtured when basic needs were thwarted or unsupported, and when teachers were perfectionistic. This was experienced more in ballet. Promoting autonomy support in ballet appears to be of crucial importance.(Nordin-Bates,p.1)

 

 

ちなみにこちらは古い論文ではありません。

2019年に発表されたもの。

 

自主性=創造性ではありませんが

自主性なしで創造性は生まれない。

 

上記の論文の中でも

コンテンポラリーダンスの教育環境が

完璧だとは書かれているわけではありません。

同じような問題はどこでも見受けられるのですが

バレエはPCさんが多い…

 

私はあちらこちらに教えに行きますが

エリートなバレエ学出身のダンサーに

いまだに多く見られる傾向だと思います。

もちろん例外も多くありますし

学校を卒業し、プロとして活動し初めて

変わる人も多くいます。

 

ただ心配なのは変わらないダンサーさん達です。

PCであることにより

大切な一歩を踏み出せずに 

自分の本当の良さや能力も発揮できずに

多くのチャンスも逃しそうですし

ハッピーな生き方ではないと思います。

場合によっては摂食障害も弊害。

最悪な場合は踊りをやめても変われない。

一生引きずる損な傾向。

 

指導者や親が創る環境が多く影響する完璧主義

教えることができるクリエイティビティ 

そしてもちろん生きていく上での幸福感。

 

若い方々の将来を大切に思うならば

真剣に考える必要性があると感じます。

写真:バルセロナ、モンチュイック

 

Fuschia M. Sirois, Danielle S. Molnar (2017). Perfectionistic strivings and concerns are differentially associated with self-rated health beyond negative affect, Journal of Research in Personality,70, 73-83. https://doi.org/10.1016/j.jrp.2017.06.003.

Sanna M. Nordin-Bates (2019): Striving for Perfection or for Creativity, Journal of Dance Education, DOI: 10.1080/15290824.2018.1546050 

Ryan, R. M., & Deci, E. L. (2000). Self-Determination Theory and the Facilitation of Intrinsic Motivation, Social Development, and Well-Being. The American Psychologist, 55(1), 68–78. https://doi.org/10.1037/0003-066X.55.1.68.

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